埼玉県主要都市部の地下の地質構造を可視化―軟弱層の分布を3次元的に把握可能:産業技術総合研究所
(2025年4月24日発表)
(国)産業技術総合研究所は4月24日、埼玉県主要都市部の地下の軟弱層の分布を3次元で可視化し、都市域の地質地盤図「埼玉県南東部」として公開したと発表した。ハザードマップ作成や都市インフラ整備などへの活用が期待されるという。
産総研が作成している都市域の地質地盤図は、ボーリングデータなどをもとに、都市域の地下の地層の分布を3次元解析して描いた地質図。地層の3次元の分布形態を平面図、断面図、立体図で表示したり、解析に使用したボーリングデータを産総研地質調査総合センターのウェブサイトから閲覧したりできる。
これまでに「東京都区部」「千葉県北部地域」を公開、今回はシリーズ3作目。
埼玉県南東部の低地には沖積層(ちゅうせきそう)と呼ばれる軟弱な地層が分布している。沖積層は、約2万年前の最終氷期の最盛期以降に河川沿いや沿岸域に堆積した、新しい時代に形成された地層で、水分を多く含み柔らかいことが多い。低地の地盤を構成し、東京下町から埼玉県南東部の低地の地下には、最終氷期に形成された深い谷を埋めて沖積層が厚く分布している。
産総研は今回、埼玉県環境科学国際センターの協力を得て、大量のボーリング調査データを解析。沖積層の3次元の分布形状を詳細に描き出し、埼玉県南東部の地下数十mまでの地質構造を可視化した。
荒川低地の沖積層は泥層(でいそう)を主体としながらも砂層をやや多く含むのに対し、中川低地では泥層が卓越し、極めて軟弱な地盤から成ることが明らかになった。
一般に低地に比べて台地は地盤が良いとされているが、今回のボーリングデータ解析により、荒川低地と中川低地に挟まれた大宮台地の地下に軟弱層を見出し、この軟弱層の詳細な3次元分布形状を描くことができた。
大宮台地の地下の軟弱層は、沖積層が埋積する谷よりも古い、約14万年前の氷期に形成された谷を埋めるように分布していた。台地の地下に軟弱層が厚く分布するさいたま市浦和区付近では、台地でありながら荒川低地とあまり変わらない地盤強度であることがわかった。
軟弱層は地震の揺れを増幅させたり、地盤沈下の原因になったりする。このような地層の分布形状を示した地質地盤図は、ハザードマップ作成や都市計画、土木・建築設計等への活用が期待されるとしている。