「熟睡」も「睡眠障害」も、自覚症状と客観診断の間には大きなずれ―睡眠障害のリスク発見には専門家による適切な計測、診断が必要:筑波大学
(2025年1月17日発表)
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢 正史 教授の研究グループは1月17日、睡眠不調と感じている人の66%は問題がなく、十分な睡眠をとっていると感じている人の45%に睡眠不足が疑われる、との調査結果をまとめ発表した。自覚的な睡眠評価だけではリスクを正しく捉えることが難しく、専門医師による総合的な計測、診断が重要だとしている。
睡眠障害の治療を受けていない421人(平均年齢47.3歳、男性47%、女性55%)を対象に、健康診断の一環として取得したデータを分析した。
1人当たり1晩から6晩の睡眠脳波と血中酸素飽和度の測定データ(客観的な睡眠データ)に対し、睡眠に関する質問表の回答(自覚的な睡眠評価)を照らし合わせ、医師が「不眠」「睡眠不足」「睡眠時無呼吸」などの観点から分析し評価した。
その結果、医師の評価は客観的な数値と強く関連していたものの、受診者が自覚する睡眠の評価とは全く異なっていることが明らかになった。
「十分寝ている」と思う人の45%で睡眠不足が客観的に疑われ、質問票で「睡眠不調」を訴えた人のうち66%は客観的に不眠がなかった。
また質問票で睡眠の質が「満足」と答えた人の40%に、実は中等症以上の睡眠時無呼吸症候群に該当する可能性もあった。
こうした結果から、自覚だけでは十分な睡眠の健康評価を行うのは難しく、自宅での睡眠脳波測定とそれに対する医師の診断が睡眠習慣の改善と睡眠障害の早期発見に役立つと見ている。
筑波大学発スタートアップ企業の「(株)S’UIMIN」が、自宅で簡単に睡眠時脳波を測定できる機器InSomnograf(インソムノグラフ)を開発した。これは睡眠検査の標準法である終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査と同等の精度で睡眠を測定でき、睡眠健康診断に使われている。