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高分子のモノマー配列を決定する解析手法を開発―プラスチックのリサイクル問題解決などに貢献へ:物質・材料研究機構

(2023年4月28日発表)

 (国)物質・材料研究機構は4月28日、高分子のモノマー配列を質量分析とAIで決定する解析手法を開発したと発表した。新たな素材開発やプラスチックのリサイクル問題の解決などへの貢献が期待されるという。

 高分子(ポリマー)は、原料である小さな分子(モノマー)が百~数十万個も鎖状につなぎ合わさってできている。我々の身の回りにあふれる高分子材料、すなわちプラスチックや樹脂の多くは、いくつかのモノマーを組み合わせたコポリマーという高分子(共重合体)を設計することで、望みの性能を得ている。

 こうした複数種のモノマーから合成されるコポリマーでは、各モノマーの並び方(配列)が材料特性に大きな影響をもたらしていると考えられており、その配列を解読する技術であるポリマーシークエンサーの開発が高分子構造解析においての課題の一つとされていた。

 研究チームは今回、配列分布を定量的に決定する世界初の実用的なポリマーシークエンサーを開発した。

 プラスチック材料を室温から徐々に加熱すると、鎖状の高分子は切れやすい部分から連続的に分解する。この高分子の断片を質量分析すると元々の高分子に含まれていた部分配列の種類とその個数を反映した質量分析データが得られる。

 この実測された質量分析データをAI解析し、元々の高分子を、部分配列ごとに並んだ仮想的な高分子として並び替えることで、高分子のなかでの配列を定量化した。

 ポリマーシークエンサーによる配列解析は、モノマーの種類や成分数に制約を受けず、広範なモノマーの組み合わせに対しても適用できる。また、断片が気化さえすれば、不溶・不融のサンプルや、無機成分を含むコンポジットでも解析できることから、様々な実材料への応用が期待できるという。

 今後、ポリマーシークエンサーを基軸に、高分子材料における配列―物性相関解析や、配列制御重合法の開発を進めることで、高分子材料全般の性能向上を図っていきたいとしている。