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害虫に極めて強いダイズの新品種を開発―東北など寒冷地での栽培に好適:農業・食品産業技術総合研究機構

(2023年2月28日発表)

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ナンブシロメ(左2畦) リョウユウ(中央2畦) ナンブシロメ(右2畦)
ダイズシストセンチュウのレース1発生ほ場における播種後8週間目の草姿(2020年))(提供:農研機構)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は2月28日、害虫に強いダイズ(大豆)の新品種を開発したと発表した。「ダイズシストセンチュウ」と呼ばれるダイズ栽培の害虫に強く、「リョウユウ」と名付けた。東北地域を中心とする寒冷地での栽培に適し、既存の抵抗性品種では対応が困難な地域への普及が見込まれ国産ダイズの安定生産、増産に繋がるものと農研機構は期待をかけている。

 我が国の食品用ダイズの消費量は年間約100万t。しかし、国内生産量は年20万~25万tに留まっており、増産が望まれている。だが、地力の低下や病害虫などによる影響のため十分応えられないでいる。

 特に東北地域では、ダイズシストセンチュウが重要な病害虫となっており、新品種はそれに耐えられるようにしようと開発した。

 ダイズシストセンチュウは、ミミズのように土の中に生息しダイズの根に害を及ぼす線虫類の一種。雌(メス)の成虫は、レモンに似た形をしていて大きさは僅か1mm以下と非常に小さいが、この雌が難物で、土中のダイズの根に付着して多数の卵が詰まった「シスト」と呼ばれる状態になる。そして、そのシストに詰まった卵は、土壌中で実に数年以上にも亘って生存し続け、病原となって根に侵入していく、ということを繰り返すことで増えていく。

 今回、農研機構が開発したダイズ「リョウユウ」は、北東北地域で作付けされているダイズの主力品種でダイズシストセンチュウに抵抗性を持たない「おおすず」という品種を親に使って①5回にわたる交配の繰り返しと、②抵抗性をもつ「東北116号」を親にした交配を加え③選抜を行って作り上げた。

 その結果、「おおすず」の根には多くのダイズシストセンチュウのシストが生じてしまうのに対し、「リョウユウ」の根にはそのシストの寄生がほとんど生じないことが圃場(ほじょう)試験で確認できたとしており、ダイズシストセンチュウに極めて強いダイズが得られることが分かった。

 また、「リョウユウ」は、ダイズモザイクウイルスへの抵抗性も持っており、ウイルス感染による減収や品質低下も防げるという。