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過呼吸で鈍る皮膚の温度感覚―CO2の過剰排出が原因:筑波大学ほか

(2023年1月13日発表)

 筑波大学と新潟医療福祉大学は1月13日、恐怖や痛み、急激な温度変化などのストレスで過呼吸(過換気)が起きると皮膚が痛みや温度を感じにくくなるのは体内の二酸化炭素(CO2)濃度が低下するのが原因と発表した。夏の暑熱下での運動、冬の水難事故などで大きな体温変化が起きるとCO2が体内から過剰に排出されて「暑い」「寒い」といった感覚が鈍り、熱中症や低体温症の発生を助長している可能性があるという。

 筑波大の西保 岳教授と新潟医療福祉大の藤本 知臣講師らの研究チームは、過換気になると体内のCO2が必要以上に排出され、脳への血流供給が弱まる低二酸化炭素血症に陥ることがある点に注目。過換気で生じる体内のCO2濃度の変化が皮膚温度感覚に与える影響を調べた。

 23~29歳の男女15人を対象に、まず通常呼吸時の皮膚温度感覚を測定。その後、ストレス時に生じる過換気によって体内のCO2を過剰に排出させた場合と、過換気のままCO2を吸入することで過剰な排出を防いだ場合について皮膚温度感覚の変化を調べた。その結果、過換気で体内のCO2が過剰に排出されたときだけ、被験者は皮膚の温度変化を感じにくくなることが分った。

 これらの結果から、研究グループは「過換気で皮膚感覚が鈍るメカニズムで重要なのは、過換気自体ではなく、過換気によって生じる体内のCO2の過剰排出であることが示唆された」と話している。