世界的な野菜類の難病を防ぐ方法を開発―天然アミノ酸で「黒斑細菌病(こくはんさいきんびょう)」を抑制:筑波大学
(2022年11月29日発表)
筑波大学生命環境系の石賀康博助教らの研究グループは11月29日、アブラナ科植物の難病の一つとされている「黒班細菌病(こくはんさいきんびょう)」が天然に存在するアミノ酸で抑制できることを発見したと発表した。多くの天然アミノ酸が黒斑細菌病菌の侵入を防ぐ働きを持っており、キャベツを使ってそれを実証した。世界中で大きな被害が出ている難病なだけに実用化が期待される。
アブラナ科植物とは、十字架状に4枚の花びら(花弁)をつける植物のこと。そのため、別名を十字架植物ともいい、キャベツ、ハクサイ、ダイコンなど多くの実用野菜が含まれる。
黒斑細菌病は、そのアブラナ科植物の主に葉に発生する難病で、進行すると枯れてしまう。苗から収穫期まで生育の全ステージで発生し、雨が降ると感染が圃場の全域に拡大してしまうために世界中の産地でしばしば大発生が起きている。
そのため、防除法として抗生物質などの殺菌剤が開発され使用されているが、今度はそれによってそれらに耐える耐性菌の出現が助長されるという問題が生じ、これを解決する方法の開発が求められている。
そこで研究グループは、代表的なアブラナ科植物の一つで大きな被害を受けているキャベツを選んで新たな防除方法の開発に取り組んだ。
植物の葉面には、気孔と呼ばれる小さな孔(あな)が無数にあいている。太陽光が当たると孔を開いて(開口)光合成に必要なCO₂(二酸化炭素)を取り込んでいる。
研究グループは、その気孔で行われている自然界の開口現象に注目、キャベツ黒斑細菌病の細菌が気孔の開口部から植物体内に侵入し増殖しているのを見て気孔がアミノ酸に対してはどのように応答するのかを観察した。
すると、スプレー噴霧することにより生体を構成するアミノ酸20種類の内の14種類が開口を狭めキャベツ黒斑細菌病の細菌侵入を抑制する働きを示した。
さらに解析を進めたところ、アミノ酸の内のシステイン、グルタミン酸、リシンは開口の幅を狭くする効果が特に大きく、キャベツ内部への細菌の侵入数が少なくなることが判明、気孔の開口幅の減少に伴って細菌の植物内への侵入が減ることを掴んだ。
一方、アミノ酸を噴霧でなく生体に直接打ち込むとスプレー噴霧で見られた効果は生じないことが分かった。
研究グループは「多くの細菌病菌や一部の真菌はキャベツ黒斑細菌病菌と同じく、気孔を主な侵入場所とするため、この方法はさまざまな病害に対して有効であると考えられる」と今後の展望について話している。