中性子の反射を利用してコンクリートの亀裂を非破壊検査―道路橋や滑走路、トンネル壁などの検査に適用可能:理化学研究所/土木研究所ほか
(2016年11月1日発表)
(国)理化学研究所と(国)土木研究所の共同研究グループは11月1日、中性子の反射を利用してコンクリート内部の損傷を非破壊検査する技術を開発したと発表した。コンクリートでできた道路橋の床版(しょうばん)や空港の滑走路、トンネル壁などの検査に利用が期待できるという。
放射性粒子の一種である中性子はシリコンやカルシウムなどを多く含むアスファルトやコンクリートはよく通るが、水素やリチウムといった軽元素とは相互作用が強く、水などがあると散乱・反射しやすい。
この性質を利用し、コンクリート面に中性子を照射して反射してきた後方散乱中性子をキャッチすると、アスファルト舗装下のコンクリート面にある亀裂や水などを検出できる。
理研では中性子を発生する小型中性子源システム(RANS)を開発しており、今回この中性子源を用いて後方散乱中性子による非破壊検査実験を行った。実験ではコンクリートの厚み方向に中性子を入射し内部構造を計測した。
その結果、最大で30㎝奥にある水に見立てたアクリルブロックや空洞の位置を二次元分布で特定でき、構造物の非破壊検査に適用できることを確認した。
今後は検査現場に持ち込み可能な可搬型の加速器中性子源の開発や、測定時間短縮のための検査器の改良などを進め、実用化を目指したいとしている。