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ダイズのさび病被害半減も―バイオマス素材が有効:筑波大学

(2021年9月7日発表)

 筑波大学は9月7日、主要穀物として世界中で広く栽培されているダイズに大きな被害を与えるさび病がバイオマス素材のセルロースナノファイバー(CNF)をダイズの葉に散布することで半分に抑えられることが分かったと発表した。農薬や殺虫剤を使わない環境にやさしい持続可能な農業の実現に役立つと期待している。

 筑波大の石賀康博助教らの研究チームが実験に用いたCNFは、植物の細胞壁の主な構成成分であるセルロースをナノメートルレベル(ナノメートルは、10億分の1m)にまで微細化したバイオマス素材。これを0.1%濃度の水溶液にしてダイズの葉にスプレーし、何も処理しないダイズとさび病に対する抵抗力を比較した。その結果、ダイズの葉にできたさび病菌の病斑数は、何も処理しなかった場合に比べて約半分に減ることが分かった。

 ダイズさび病菌の感染は、さび病菌の胞子がダイズ葉面の水をはじく疎水(そすい)性を認識して発芽し、付着器と呼ばれる特殊な器官を形成して植物内に侵入していくことが知られている。そこで研究チームはCNF水溶液を散布したダイズの葉で、これらの感染がどのように進むかを顕微鏡で観察したところ、感染に欠かせない付着器の形成が約半分に抑制されていることが分かった。

 この結果から、研究チームは「CNFで覆ったダイズ葉では、ダイズさび病菌が表面特性を認識できないことから付着器も形成されないために感染行動が阻害される」として、ダイズさび病の病害の発生が抑制されたとしている。