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テントウムシの脚裏の接着と剥離(はくり)の原理を解明―ロボットの脚や部品の着脱などに応用へ:物質・材料研究機構

(2021年6月3日発表)

ガラス基板上のテントウムシ(白い部分が脚裏) 
©物質・材料研究機構 細田

 (国)物質・材料研究機構と東京大学、キール大学(ドイツ)の研究グループは6月3日、長年議論が続いていたテントウムシの脚裏の接着の原理を解明したと発表した。天井や壁を歩行する昆虫の脚の「接着と剥離」に関する今回の成果は、ビルの壁面を自在に移動する災害対策ロボットの脚部の開発や、製品リサイクル時の分解を容易にする部品着脱技術への応用が期待されるという。

 テントウムシの脚裏は細長い剛毛が生えた毛状構造で、硬い剛毛なのにガラスのような平滑面を滑らずに歩ける。これは脚裏に「接着と剥離」を迅速に繰り返せる機能があるためだが、それを可能にする理由を研究したマンチェスター大学(英国)の研究者は、1980年に脚裏の剛毛と基板が分子間力により接着することによる、との説をとなえた。

 その一方で、足裏から分泌され、剛毛の表面を覆う分泌液の量によっては表面張力(毛管力・ラプラス圧力)や凝集力も作用する可能性がある、と指摘。分子間力によるのか、それとも分泌液の表面張力によるのか、これまで40年間接着の原理は解明されないまま議論が続いていた。

 研究グループは、まずテントウムシの分泌液層の厚さを測定し、その厚さが分子間力が作用する範囲であることを確認した。分泌液層の厚さは10~20nm(ナノメートル、1nmは100万分の1mm)以下で、この測定はこれまでで初めてという。

 次にテントウムシが歩くときの牽引力(けんいんりょく、歩いて引っ張る力)を測定、牽引力をもとに接着力を評価し、それらの結果から、テントウムシの接着力は接着仕事に相関することが分かり、主要な接着の原因は分子間力(ファンデルワールス力)であることを突き止めた。

 分子間力の中では分散性成分が主であり、極性成分の影響は受けないことも分かったという。これはテントウムシが分散性の高い成分を含む表面に強く付着できることを示している。植物の葉の多くはワックスで覆われており、分散性成分の高い表面になっている。テントウムシは生息地の植物種に適応できる脚裏を発達させたと考えられるという。

 研究グループは今後この成果をもとに人工的な接着・剥離構造を開発し、製品や装置への応用を目指したいとしている。