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世界34都市上空のCOを観測して変動を解析―民間旅客機を利用して10年間にわたって計測:国立環境研究所ほか

(2020年5月15日発表)

 (国)国立環境研究所、気象庁気象研究所などの研究グループは515日、民間旅客機を利用して得た高空のCO2(二酸化炭素)観測データを解析し、世界各国の主要34都市上空のCO2濃度変動の特徴を明らかにしたと発表した。CO2の排出が多いと見られる都市ほどその上空におけるCO2濃度の変動幅も大きいことが分かったという。

 大気中のCO2濃度は年間約23ppm(ppm100万分の1)の割合で増加を続けていて、人為的なCO2排出の約70%は世界の人口の約半分が住んでいる都市域から出ているとされている。

 こうしたことから両研究所は都市上空の温室効果ガス観測の一環として日本航空(JAL)などと共同で世界の主要都市上空のCO2を計測する「CONTRAIL(コントレイル)」と呼ぶプロジェクトに取り組んでいる。

 世界中の空を飛んでいる国際定期便を使って上空の大気を観測して地上からでは分からない高空の広い範囲にわたるCO23次元分布と濃度の変化を明らかにしようとJALの旅客機にCO2濃度連続測定装置と自動大気サンプリング装置を搭載して2005年から開始したのがCONTRAILプロジェクト。

 観測は約10年間で13,000回を超え、成田空港上空の約7,700回を最高に羽田空港4,400回、ホノルル空港2,100回、シドニー空港1,600回、パリ空港700回など世界の34の都市上空で行われ、700万点を超えるCO2の濃度データを得ている。

 今回その2005年から2016年まで約10年間をかけて取得した世界の34の空港直上のCO2濃度データを解析した。

 その結果、多くの空港の上空約1,000mに高いCO2濃度が出現する風向きがあって、①大きなCO2濃度の増加は弱い風の時に生じやすい、②CO2増加の変動幅は下層ほど大きい、➂4,000m程度の高さに達すると地表のCO2排出吸収の影響がほとんど到達しない清浄大気になる、ことが分かった。

 これをもとにさらに、各空港について上空約1,000mのCO2変動幅を計算したところ、人口の多い世界的大都市の近郊にある空港の上空で特に大きな変動が見られ、東京、デリー(インド)、メキシコシティー、上海、大阪などの上空で非常に大きなCO2濃度の変動が検出された。

 このことから、「CO2排出が大きいと考えられる都市ほどその上空のCO2濃度の変動幅も大きいことが明らかになった」と研究グループは結論している。