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イネがアルミニウム毒性に強い理由を解明―根から分泌されるペクチンがアルミニウムをトラップ:筑波大学

(2019年10月4日発表)

 筑波大学は10月4日、酸性土壌で植物の成長阻害要因となるアルミニウム毒性に対して、イネが強い理由を解明したと発表した。イネのアルミニウム毒性緩和に関するこの成果は、酸性土壌でも栽培可能な作物の作出につながることが期待されるという。

 アルミニウムは、地殻に最も多く含まれる金属元素で、土壌のpHがおおよそ5以下の酸性になると溶け出して植物に吸収され、植物の成長を阻害する。アルミニウムによる成長阻害は、乾燥に次いで大きな作物収量低下要因とされている。

 アルミニウム耐性が強い植物では根から有機酸が分泌され、土壌中のアルミニウムが有機酸と化合物を形成することで根に吸収されにくくなることが知られている。それに対し、イネではその働きが確認されていないにもかかわらず、高いアルミニウム耐性を持っており、その仕組みは謎だった。

 研究グループはイネの根から分泌される細胞壁成分のペクチンに着目し、ペクチンと、根へのアルミニウム吸着との関係を調べた。

 まず、アルミニウム濃度を変化させた時の根のペクチン分泌を調べたところ、野生型のイネではアルミニウム濃度が高まるほどペクチンの分泌量が多くなった。アルミニウム存在下で根の伸長が抑えられる変異体ではアルミニウム濃度が高まってもペクチン分泌量の増加は見られなかった。

 次に、ペクチン分泌と、根へのアルミニウムの吸着との関係を調べたところ、アルミニウム濃度が高いとペクチン分泌が増える野生型のイネでは、アルミニウムの根への吸着はほとんど起きていなかった。それに対し、ペクチン分泌量の増加がみられなかった変異体ではアルミニウムの根への吸着が確認された。

 これらの結果から、ペクチンがアルミニウムをトラップすることによりアルミニウム毒性が緩和されることが判明した。

 アルミニウム耐性に弱い作物に対してイネのこの仕組みを応用すれば、酸性土壌でも栽培できる有用な作物の作出が期待されるとしている。