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過去2千万年の連続堆積物発見―北太平洋の海洋環境解明も:高知大学/富山大学/秋田大学/産業技術総合研究所ほか

(2019年9月21日発表)

 高知大学や(国)産業技術総合研究所など国内8機関の研究グループは9月21日、九州から南太平洋のパラオまで延びる海底山脈に過去2千万年間にわたって連続的に堆積した層があることを発見したと発表した。国際的な深海掘削計画の一環で採取された海底試料を解析して突き止めた。今より著しく温暖だった時代の黒潮の流れなど、北太平洋の海洋環境の変動を解明するのに役立つという。

 研究グループは高知大海洋コア総合研究センターの松井浩紀特任助教、池原実教授ら8機関10人の研究者で構成、1973年に黒潮に近い海底山脈「九州・パラオ海嶺」の北端で採取された深海掘削試料「Site296海洋コア」を最新の技術で解析した。

 その結果、採取当時は技術的に困難だった、年代別にどのように海底で蓄積されてできた試料であるかを明らかにできた。具体的には、約2千万年前から500万年前までは千年に0.5~2cmずつ、また約500万年前以降は千年に2~4cmずつ連続的に堆積したものであることが分かった。

 これまで北太平洋の中緯度海域では、過去2000万年間にわたって連続的に海底に堆積したと確認された試料はなかった。そのため、研究グループは今回の試料が採取されたSite296地点について「北太平洋の複数の海洋コアを対比する際の標準的な地点になる」とみている。さらに、この地点の海底試料を詳しく調べることで、気候変動などに大きな影響を与える黒潮をはじめとする北太平洋海洋循環の長期的な変遷を探ることも可能になると期待している。