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ワクチン接種促進に―具体的情報発信が効果的:筑波大学

(2025年10月29日発表)

 筑波大学は10月29日、新型コロナの感染拡大を防ぐワクチンの追加接種を促すには「いつ、どこで受けられるのか」といった具体的な情報発信が効果的だと発表した。インターネット情報とワクチン接種の関係についてアンケート調査した結果を分析して明らかにした。今後、感染症が流行した時に、どのような情報発信法が感染拡大防止に効果的かを検討するのに役立つという。

 新型コロナ感染症のワクチン接種は、日本では2021年に2回接種を基本に始まった。ただその後、新型コロナウイルスの変異株が拡大したため、さらに追加のワクチン接種が進められた。

 今回の研究では、この追加接種の呼びかけに一般の人々がどう応えたかを探るため、25~64歳の日本在住の成人594人を対象にオンラインによるアンケート調査を2022年2月と6月の2回にわたって実施。インターネット情報が人々のワクチン接種行動にどう結び付いたかを分析した。

 ワクチンに関するインターネット情報については、①効果や副作用を含む専門的な情報、②いつどこで接種できるかという具体的な情報、③国内外での普及状況に関する情報、の3つに分類して調査した。

 その結果、②の自分がいつどこで接種できるかという具体的な情報に触れた場合が、ワクチンの追加接種をしようという認識を強めることにつながったことが分かった。一方、①の専門的な情報に触れることは、ワクチン接種が自分の利益になるという認識をむしろ下げることにつながり、追加接種しようという気持ちを弱める傾向があることが明らかになった。

 この結果から、調査を進めた筑波大の藤桂准教授は「ネガティブな情報はポジティブな情報より心に残りやすく、不安を喚起しやすいためではないか」とみている。一方、接種意図が高まった人がその後も積極的に情報取集をするという点については、「ワクチンに対する肯定的な信念や態度を形づくって、次の接種をしようという循環的影響が実証された」とみている。そのため今後は、別のワクチンについても同様の検証を進めていきたいとしている。