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植物が乾燥に適応できる仕組み―分子レベルの解明に足掛かり:理化学研究所ほか

(2018年11月1日発表)

 (国)理化学研究所と埼玉大学、東京大学の研究グループは11月1日、植物が乾燥に耐える仕組みの一部を分子レベルで解明したと発表した。乾燥状態に適応するために欠かせない植物ホルモンを合成する遺伝子を活性化させるたんぱく質を突き止めた。地球温暖化によって今後、頻発が予想される干ばつや熱波などの異常気象にも強い農作物の開発などに役立つと期待している。

 植物は乾燥状態に置かれると、葉の表面にある小さな穴「気孔」を閉じて水分の蒸発を防ぐなど、乾燥に耐えられるよう適応する。こうした適応反応は植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)が植物体内で活発に合成されることによって起きるが、どのように活性化されるのか、分子レベルでの詳しい仕組みは未解明だった。

 研究グループは、植物の体内で遺伝子が働いてたんぱく質を作る際に、その遺伝子の働きを制御する転写因子と呼ばれるたんぱく質に注目。実験用植物「シロイヌナズナ」を使って、1,670種類に及ぶ転写因子の働きを網羅的に調べた。

 その結果、主としてNGA1と呼ばれる転写因子がNCED3という遺伝子の働きを活性化し、植物ホルモンのアブシジン酸の合成を促進していることが分かった。さらに、乾燥ストレスにさらされた条件下では、植物体内にこのNGA1転写因子の量自体が増えていることが明らかになった。

 この結果から、研究グループは「NGC1転写因子がNCED3遺伝子を活性化させることにより、乾燥ストレスに必要な植物ホルモンABAの合成を促進させることが示せた」とみている。そのため「乾燥条件下においてNGA1転写因子の存在量を制御するメカニズムを明らかにしていく足掛かりが得られた」として、今後、乾燥ストレスに強い植物を作る技術開発につながると期待している。