(独)産業技術総合研究所は2月19日、産学官連携プロジェクトでエタノール(エチルアルコール)燃料一貫製造プラントのベンチプラントを、同研究所中国センター(広島・呉市)内に建設し、製造プロセスの実証試験を開始したと発表した。 ブラジルや米国では、サトウキビやトウモロコシなどからのエタノール製造が急増し、食料や家畜飼料の価格を押し上げ、新たな社会問題となっている。 実証試験を開始したベンチプラントは、木材やワラなど食糧や家畜飼料にならないセルロース系のバイオマス(生物資源)を原料とする環境負荷の小さい非硫酸方式によるエタノール燃料の一貫製造装置。1回当たりの処理量は、木材で200kg。 製法は、湿式カッターミルで処理した原料を水熱処理装置内で温度・圧力をかけて軟化させ、湿式ディスクミルで微粉砕する。これで原料の繊維がほぐれて酵素による糖化が容易になり、さらに遠心脱水機で固形分が20%程度になるまで脱水し粘土状にする。 ついで糖化・発酵タンク内で、糸状菌培養液を混合し原料を糖化する。この液に酵母培養液を加えて発酵させ、反応後のエタノール発酵液を蒸留・膜脱水装置にかけて99.5%以上のエタノールにするというもの。 セルロース系資源からのエタノール燃料転換技術としては、濃硫酸法や希硫酸二段糖化法、希硫酸・酵素糖化法などが先行しているが、それらの方法は硫酸を用いるため、廃棄物処理や環境負荷の低減にコストがかかり、エネルギー変換効率に限界があるといわれている。 ベンチプラントで得られるデータを基に「経済性の評価、全段階を通しての環境影響を評価するライフサイクル評価(LCA)を行い、産業化のシナリオを描きたい」と同研究所は言っている。
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本格稼動を開始したセルロース系バイオマスを原料とするエタノール燃料一貫製造ベンチプラント(提供:産業技術総合研究所) |
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