(独)産業技術総合研究所は2月17日、水分に分散して長期間安定で、発光効率の高いリン化インジウム(InP)ナノ粒子の開発に成功したと発表した。
培養細胞などの生体内の微量物質の量や分布、動きを観察するバイオ研究用蛍光試薬として、直径が2~6nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の半導体ナノ粒子が使用されている。半導体ナノ粒子は、紫外線を当てると発光する。また、粒子の大きさにより発光波長が変わるので、粒径により緑や赤などの発光色が得られる。
これまで研究用の蛍光性ナノ粒子として、外側が硫化亜鉛(ZnS)で被覆されたセレン化カドミニウム(CdSe)などが用いられてきたが、培養細胞での試験で溶出したカドミウムが細胞死を引き起こすため、高輝度で安定な蛍光試薬が求められていた。
同研究所は、InPナノ粒子に着目し、安全で簡便な方法で作製でき、水中でも高い発光効率を得ることを目標に研究を進めてきた。今回開発したInPナノ粒子(粒径2.3~4.0nm)は、InPをコア(核)とし、外側がZnSで被覆されたInP/ZnSコアシエル型構造をしている。
研究では、InPナノ粒子を、「ソルボサーマル法」という合成法を用いて、比較的低温(150~180ºC)の有機溶媒の中で合成するなど、3段階の化学反応によるInP/ZnSの作成方法を開発し、ZnS被覆を厚く(1.5nm)することで、発光効率と化学的安定性の向上を実現した。このナノ粒子は、水によく分散し、紫外線照射により水中で高い効率で発光(緑~赤色領域で30%以上)し、最高68%(赤色)の発光効率を記録している。
新しいInPナノ粒子は、今までのカドミウム含有ナノ粒子に比べて、バイオ標識用蛍光ナノ粒子として広い範囲での応用が期待されている。
同研究所では、今後量産性の検討を行い、ベンチャー化に向けた準備を進めると共に、関連メーカーとの連携を図る計画である。
この研究は、(独)科学技術振興機構の独創的シーズ展開事業として行われた。
No.2009-7
2009年2月16日~2009年2月22日