タンパク質の「スワッピング機能」と、新規の「翻訳後修飾メカニズム」を発見:筑波大学

 筑波大学は9月15日、大学院生命環境科学研究科生物機能科学専攻の研究グループが、タンパク質の「スワッピング機能」と、新規の「翻訳後修飾メカニズム」を発見したと発表した。
 研究グループは、ロドコッカス属放線菌の酵素「ニトリルヒドラターゼ」の生成機構を研究している過程で、2つのコンポーネント(成分)から構成されているこの酵素の片方のコンポーネントが、他のタンパク質複合体の同一コンポーネントと置き換わる(スワッピング)ことで、酵素が活性を示す現象を発見した。
 ロドコッカス属微生物は、芳香族化合物や塩素系化合物などに高い分解活性を示す微生物で、酵素「ニトリルヒドラターゼ」は現在、紙力増強剤など様々な用途があるアクリルアミドやビタミンの一つであるニコチンアミドの工業生産に使用される実用酵素として知られている。
 アミノ酸の配列が完全に同じであるタンパク質のコンポーネント同士が、互いに入れ替わる現象はこれまでに例がなく、また、タンパク質の翻訳後修飾メカニズムにおける初めての例である。研究グループは、翻訳後修飾メカニズムの主役となるタンパク質複合体を明らかにすることにも成功した。
 遺伝子の遺伝情報に基づくタンパク質合成反応の第1段階であるDNA(デオキシリボ核酸)からメッセンジャーRNA(リボ核酸)に転写された核酸塩基を基に、タンパク質が合成されることを「翻訳」というが、タンパク質が合成された後にタンパク質の化学的な構造変換(修飾)が起こる場合があり、これを「翻訳後修飾」といっている。
 この方法により、活性を失った酵素の修復(活性化)も可能で、酵素「ニトリルヒドラターゼ」による有用物質生産のリサイクルにも応用できるものとみられている。

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