窓ガラスに貼れる日射熱反射フィルムを開発、熱の流入半分以下に:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は9月17日、採光や展望を損なわないように透過前の約80%の明るさ(照度)を確保しながら、熱(日射エネルギー)の流入を約50%以下に抑えるフレキシブルな「日射熱反射フィルム」を開発したと発表した。このフィルムを既設の窓ガラスに貼れば、明るさを保ちながら冷房用エネルギーを低減できるので、新たな省エネ対策になると期待される。
 日本では冷房が必要な夏の昼間、建物内に入る日射エネルギーの71%は窓から入り込むが、このエネルギーの約半分は近赤外線によるもの。したがって、採光を余り犠牲にせず、日射熱だけ反射する窓ガラスなどを使えば、それだけ冷房用エネルギーを使わずに済む。産総研は、これまで進めてきた太陽光の近赤外線だけを反射するガラスの研究を発展させ、プラスッチックに日射熱反射膜をコーティングする技術を開発した。
 研究者は、厚さ0.5mmのポリカーボネート基板上に酸化ケイ素や酸化チタンなどを主成分とする厚さ0.3µm(マイクロメートル、1µmは100万分の1m)の多層膜をスパッタリング法という方法で形成した。プロセス温度を下げ、緩衝膜を導入、屈折率の異なる各層の厚さをnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)オーダーで制御することで、可視光の透過と近赤外線の選択的反射を両立させ、日射エネルギーの透過率を47%に抑えつつ、透過後の光の照度比78%を確保した。
 このフィルムは、通年で約20%の熱負荷軽減効果があると試算されているが、暖房が必要な時期にも日射熱流入を抑えてしまうため、冷房負荷が大きい環境でこそ威力を発揮する。今後、この反射膜をポリエチレンテレフタレート(PET)やポリビニルブチラールなどにもコーティングする技術を開発、窓ガラスに貼れる日射熱反射シートとしての実用化を目指し、合わせガラスなどへの応用も検討する。

詳しくはこちら