(独)物質・材料研究機構は3月13日、超高分子量ポリエチレンの粉体を大気中でも材料劣化させずに高速でコーティングするスプレー方法を開発したと発表した。
分子量を100万~700万まで高めた超高分子量ポリエチレンは、高い衝撃吸収性を有しており、耐摩擦・磨耗性、耐薬品性などに優れ、人体にも安全であるという特性を持っている。しかし、超高分子量ポリエチレンは、流動性が乏しいため、粉体を溶融・流動させるコーディング法を用いることができない上、従来の加熱して吹きつけるコーティング手法である溶射技術では、成膜時の熱的劣化を引き起こすなどの問題があった。
研究グループは、温度制御をした超音速ジェットを用いることで、材料の熱的劣化を抑制したままコーティングを可能にする「ウォームスプレー」と呼ばれるスプレー法を活用し、従来よりも低い温度で長時間にわたって加熱・加速した。その結果、熱的劣化を抑制した緻密な超高分子量ポリエチレンのコーティングが得られた。このコーティングについて赤外分光分析を行い、原料と同じ分子構造を保っていることを確認した。
また、炭素鋼の上に厚さ50µm(マイクロメートル、1µmは100万分の1m)のコーティングを施し、人工海水中に5日間浸漬してもコーティング表面が浸漬前と同じ状態であることを確認した。
今回開発したスプレー方法は、産業用構造物に用いられる金属材料の耐環境性の向上や表面機能化に役立つと考えられている。
この研究成果は、今年6月にオランダで開催される国際溶射学会で発表する予定。
No.2008-10
2008年3月10日~2008年3月16日