企業現場で使える簡便な基準電圧発生装置を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は1月29日、液体ヘリウムを用いることなく10Vの基準電圧を発生する、デスクトップ型の量子化電圧発生装置を世界で初めて開発したと発表した。温度、湿度、気圧などの変動の影響を受けることのない基準電圧を簡単な操作で取得できるため、企業現場の電圧測定精度が飛躍的に向上するものと期待されている。
  半導体、家電、自動車をはじめ広範な産業分野で製品の設計開発、品質管理などに不可欠な電圧標準の発生には、ツェナーダイオード電圧発生装置が広く用いられてきた。しかし、この従来装置は、小型で安価だが、長時間の経過によって発生電圧が変動するため、少なくとも1年に1回は国家標準による校正を受けて精度を保つ必要があり、校正には1台数十万円の費用がかかっていた。
 企業現場では、ジョセフソン素子が発生する量子化電圧を、標準に使用することが望ましいが、標準に必要な10Vの電圧を発生させるには数万個から数十万個のジョセフソン素子アレーチップを作製する必要があった。
 これに対し同研究所は、約30万個の窒化ニオブジョセフソン素子を集積したアレーチップ2個を直列に接続し、10Vの基準電圧の発生に成功した。
 独自に開発したこの窒化ニオブジョセフソン素子は、ヘリウムの液化温度より高い温度域(10K=マイナス約263ºC)での動作が可能なため、従来型のジョセフソン素子では不可欠であった液体ヘリウムを必要とせず、小型の冷凍機で簡単に変動の少ない10Vの基準電圧を発生できる。

詳しくはこちら

新開発の基準電圧発生装置。矢印の円筒状の装置の中に窒化ニオブジョセフソン素子が内臓されている(提供:産業技術総合研究所)