森林が大気中の鉛を捕捉するフィルターの効果持つこと見つける
:森林総合研究所

 (独)森林総合研究所は10月23日、大気中に浮遊する有害な環境汚染物質である鉛を森林が捕捉して外部への流出を防ぎ、環境浄化に役立っていることを明らかにしたと発表した。
 鉛は、生物にとって少量でも有害な物質で、一度環境中に排出されると長期間留まる物質として知られている。鉛は、質量数の異なる4種類の同位体をもっており、大気中に含まれる鉛の組成比が、日本の地質(鉱物)に含まれる鉛の組成比と異なるところから、森林生態系に存在する鉛が降雨により降り注いだものか、もともと現地に存在していたものかを区別することができる。
 同研究所では今回、関東地方のスギ林において降水、土壌、樹木中に含まれる鉛を観測し、その安定同位体比を分析した。その結果、大気中の鉛は、降雨により森林に降り注いだ後、樹木(幹、枝、葉、樹皮など)、及び土壌の表層(0~10cm程度の深さ)にのみ存在し、10cmより深いところでは見られないことを明らかにした。
 これは、森林の土壌が鉛を直接捕捉しているのに加え、樹木の根から吸収された場合には葉や枝に蓄積し、落葉などによって鉛が再び土壌表面へ戻る経路を繰り返すことで、森林からの鉛の流出を防いでいることを示している。つまり、森林は、大気や降水に含まれる汚染物質を捕捉するフィルターの効果をもっており、樹木と土壌が一体となった森林の環境浄化機能が科学的に証明されたことになる。

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