(独)物質・材料研究機構は10月22日、米国オークリッジ国立研究所の研究スタッフと共同で、新結晶「ナノハーフメタル」の開発に成功したと発表した。
ハーフメタルは、金属的伝導を担う伝導電子の状態(スピン)がすべて、アップまたはダウンと呼ばれる方向に揃っているスピン分極率100%の結晶のことで、反対方向のスピン状態の電子を全く通さないため、スピン・フイルターとしての応用が期待されている。
今回開発したナノハーフメタルは、ナトリウム1原子、バナジウム2原子、酸素4原子からなる化学組成の結晶で、「ポストスピネル」と呼ばれるnm(ナノメートル=1nmは10億分の1m)サイズの鎖を束ねたような構造をしており、ナノスケールの鎖それぞれがハーフメタル状態になっていると考えられている。このためアップスピンの電流を担うナノスケール鎖とダウンスピンの電流を担うナノスケール鎖が別々になっており、アップスピン電流とダウンスピン電流が結晶中で分かれて流れる(スピンナノ分流)。
ナノハーフメタルは、従来のハーフメタルにはないナノスケール性や、スピンナノ分流、それに外部磁場安定性という特性を備えており、革新的なスピン素子やスピンデバイスの開発や、これまで難しいとされてきたスピン流の伝送の実現に役立つ可能性を示している。
ナノハーフメタルの開発には、同研究所が主体となって高機能化を進めてきた超高圧高温結晶育成装置を使用した。この装置を使って6万気圧まで原材料を圧縮し、さらに1700ºCで数時間加熱することによって最大で2.5mm程度の長さを持つナノハーフメタルの結晶が育成された。
No.2007-42
2007年10月22日~2007年10月28日