DNA情報からトマトの甘さや収量を予測
―新品種の育成へ労力や費用、時間の大幅削減に期待
:農業・食品産業技術総合研究機構/東京大学ほか(2016年1月20日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と東京大学、(公財)かずさDNA研究所は1月20日、DNA情報を利用して甘さと収量を高精度に予測する手法を開発したと発表した。トマトは収量と甘さの両立が難しいとされていたが、親から子へDNAが伝達される過程をコンピューターで再現、効率よく甘さと高収量の両性質を併せ持つ新品種を生み出せることが分かった。

 

■トマト以外の作物にも有効な手法

 

 研究チームは1950年代から現在までに日本で育成されたトマトの栽培用品種96系統について、DNA配列と4年間の生育調査データの関係を詳しく分析した。その結果、DNA配列の情報からトマトの甘さや収量を精度よく予測できることが分かった。

 この手法を利用すれば、苗の段階でDNAを解析すれば甘さや収量の点で優れたトマトを選ぶことができるという。新品種の育成には従来は苗を実際に育ててトマトを収穫し、収量や味を比較する必要があったが、今回の成果でそれらに必要な労力や費用、時間を大幅に削減できる見通しが得られた。

 そこで今回の成果をもとに、①DNA情報から甘さや収量を予測する手法②親から子へDNAが伝達される過程を再現する手法―を開発、コンピューターを用いた数値実験によって甘く収量の多いトマトを育成する過程を再現した。

 その結果、有望な親を選んでも一度の交配では甘く収量の多い優良品種を作るのは難しいことが明らかになった。ところが、子供の世代を交配させて次の世代を作るという手順を何回か繰り返すことによって、甘さと収量がともに優れた品種が育成できるという結果が得られた。

 研究チームは、DNA情報を利用することで甘く収量の多いトマト品種が効率よく育成できるとして実証試験に取り組んでいる。また、今回の手法はトマト以外の作物にも有効とみており、今後の新品種育成の効率化・加速化に役立つと期待している。

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