(国)物質・材料研究機構と東北大学の研究グループは1月21日、地震発生域の地下深部における塩水の電気伝導度を算出することに成功したと発表した。岩盤中の塩水は地震発生や火山噴火に影響しているのではないかと考えられている。今後、電気伝導度を手掛かりとした実態調査や研究の進展が期待できるという。
■水の超臨界状態再現の分子モデルを開発し実験
岩盤中に塩水があると、断層が滑りやすくなって地震発生に影響したり、岩盤の融点が下がったりして火山噴火に影響するとされている。しかし、地震発生域のような深部の塩水の直接調査は困難なため、電気伝導度を手掛かりする調査が考えられているが、地下10~70kmの地震発生域の高温高圧条件下での塩水の電気伝導度は分かっていなかった。
研究チームは高温高圧下において気体と液体の区別がつかない、いわゆる水の超臨界状態を再現する分子モデルを開発し、海水の6分の1から3倍の食塩濃度の範囲で、温度約400℃~1700℃強、圧力0.2~2GPa(ギガパスカル)の高温高圧下での電気伝導度を計算で導き出すことに成功した。
また、得られた電気伝導度データから、東北地方の地下を計測した際にみられた高い電気伝導度が、海水程度の塩濃度を持つ塩水の存在で説明できることが明らかになったという。これは地下深部に塩水が存在することを示唆しており、地震発生や火山噴火に地下に存在する塩水が影響するという説を裏付けるものと考えられるという。
今後、沈み込み帯の中にどのような塩水が存在するかなどを調べ、地震や火山活動のメカニズムに迫りたいとしている。