リサイクル炭素繊維使う熱硬化性CFRPの強度向上
―マイクロ波で加熱し時間を短縮、コストも削減
:産業技術総合研究所(2016年1月19日発表)

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熱硬化性CFRPの曲げ強度。新品とリサイクルの炭素繊維を用いたCFRPで、マイクロ波による加熱で曲げ強度がともに約10%向上(提供:(国)産業技術総合研究所)

 (国)産業技術総合研究所は1月19日、産業廃棄物として回収された炭素繊維を使って熱硬化性CFRP(炭素繊維強化熱硬化性樹脂複合材料)の強度を向上させる製造プロセスを開発したと発表した。新たにマイクロ波加熱によって、母材の樹脂と炭素繊維の密着度を高め、強度を上げることに成功した。この新手法は、従来法に比べて9分の1に時間を短縮することができ、性能向上とコスト削減がにつなげることが期待できるという。

 

■リサイクル品の性能劣化を克服

 

 CFRPはある種の樹脂と炭素繊維でできているが、熱を加えることで硬さが増すエポキシ樹脂やフェノール樹脂を母材に使ったものを熱硬化性CFRPという。金属よりも軽く、硬度が高いことから、航空機や自動車などの構造材料に使われている。

 新品の炭素繊維を使うとコストが高いため、リサイクルのCFRPを分解して炭素繊維を取り出し、再利用していた。ところがリサイクル品は炭素繊維が劣化していて、新品より引っ張り強度や機械特性が低下するという難点があった。

 従来はオーブンを使い、数時間かけて加熱処理し樹脂を硬化させていたが、新たに電子レンジと同じ原理のマイクロ波加熱を使うと、20分程度と9分の1の時間で樹脂とリサイクル炭素繊維の密着度を10%高め、17MPa(メガパスカル)の強度を出すことができた。

 この強度は、新品炭素繊維でオーブン加熱した強度(約15MPa)と同等で、さらに曲げ強度も約10%向上させた。

 これは、愛知県が(財)科学技術交流財団に委託して、大学などの研究シーズを企業の製品化につなげる橋渡しの役割を担う産学行政の連携プロジェクト「知の拠点あいち」での取り組み。これまでCFRPの廃棄物対策として、過熱水蒸気を使ってCFRPを分解し、リサイクル炭素繊維として回収する技術を開発していた。

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