音声チック症状をサルで再現に成功
―脳の特定部位が同期、過剰活動と症状発現が関係
:筑波大学/韓国脳科学研究所/放射線医学総合研究所ほか(2016年1月21日発表)

 筑波大学や韓国脳科学研究所など6機関は1月21日、突然奇声を発してしてしまうなどの症状を示す神経発達障害「音声チック」をサルで再現することに成功したと発表した。このモデルザルを用いた実験で脳の特定部位が同期しながら過剰な活動を示すことが症状の発生と密接に関係していることを突き止めた。新しい治療法の開発につながる重要な手がかりになると期待している。

 

■治療法開発に有力な手がかり

 

 研究チームには(国)放射線医学総合研究所、関西医科大学、京都大学霊長類研究所、(国)理化学研究所も加わった。

 音声チックは、まばたきや顔をしかめるなどの動作を無意識に繰り返す「運動チック」とともに18歳未満の100~1,000人に1人の割合で発症する「トゥレット障害」の一つ。その症状のために患者の社会生活にも影響することが多いが、発症のメカニズムは未解明で有効な治療法もなかった。

 研究チームは、脳の中でさまざまな運動機能疾患に関係する部位のうち、特に発声に関わる「前部帯状皮質」と、それに強く結合する「側坐核」に注目。人間と似た脳を持つマカクザルを使って側坐核の神経活動を薬品で興奮状態にする実験を試みた。その結果、異常な発声を繰り返す音声チック症状が再現できた。

 そこで脳の活動状態を3次元的に観察できるPET(陽電子放出断層撮影)で調べたところ、発声や情動と深く関わる部位が過剰に活動していた。さらに、これらの部位の神経活動を電気的に詳しく解析した結果、前部帯状皮質、側坐核、発声運動に関わる一次運動野という3つの部位が同期しながら活動、しかも音声チック症状が現れるタイミングと一致していた。一方、こうした同期現象は正常なサルでは起きないことが分かっている。

 この結果から、研究チームは「側坐核、前部帯状皮質、一次運動野の神経活動が同期することで音声チック症状が現れる」とみており、今後は脳内への埋め込み電極などで神経活動の同期現象を抑えるという外科的な処置も新治療技術の候補になるとしている。

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