筑波大学と東京工業大学など共同研究グループは1月12日、競泳自由形の最適な泳法を解析・検討したところ、速度を最優先するか、効率的な泳ぎを重視するかの違いによって最適な泳法は異なり、いずれも渦が推進力発揮のキーポイントであることが分かったと発表した。
■渦の発生過程の違いが推進力発生に影響
競泳界では長年にわたって、曲線的に水をかくS字型のクロール泳法と、直線的に水をかくI字型のクロール泳法とではどちらが速く泳げるのか論争が続いてきた。スイス、オーストラリアの研究者を交えた共同研究グループは、流体力学研究の最新の計測・解析技術によって得られたデータを持ち寄り、最適なクロール泳法を多角的に検討した。
その結果、ヒトの筋出力特性を考慮した泳法シミュレーションによると、最も少ない身体発揮パワーで効率よく推進力を得られる泳ぎ方は、肘を曲げて、指先が曲線を描くS字ストローク型の泳法だった。
最も速度が出る泳ぎ方は、肘をあまり曲げずに、指先を直線的に移動するI字ストローク型の泳法だった。実際の競泳でも、中長距離種目ではS字型、短距離種目ではI字型が多く、好成績も出ていた。
ヒトが泳ぐ動作を再現できる水泳ロボットを用いた推進力発揮メカニズムの解析では、S字型に水をかくと、手の進行方向が変わる局面で渦の放出が起こり、非定常揚力が発揮されること、I字ストロークでは、直線的に移動する局面において、手の両サイドから交互に渦が放出され、手の平(掌)と背側で圧力差が生じ、抗力(前方方向に押す力)が発生することが分かった。
渦の発生過程の違いがそれぞれの推進力発生メカニズムに大きく影響していることが明らかになったのは世界で初めてという。推進理論の新たな展開につながる重要な発見としている。