(国)物質・材料研究機構の国際ナノアーキテクトニクス研究拠点と、東京理科大の共同研究グループは1月12日、固体電解質と磁性体を組み合わせたものに電圧をかけることで、これまでより低い電流で磁性制御ができる新しいスピントロニクス素子の開発に成功したと発表した。高密度・大容量型の全く新しいメモリーの開発につながるものと期待される。
■高密度・大容量型の新しいメモリー開発に道
スピントロニクスは比較的新しい電子工学で、エレクトロニクスが電子の「電荷」だけを利用したのに対して、電子の持っている「スピン」の成分も使い、スピン流として利用する。低電流で操作でき、発熱などが極めて少ないなど、これまでの電子工学ではできなかった新たな機能が期待されている。しかし、従来型のスピントロニクスは素子構造が複雑なため高集積化が難しく、情報の書き込み電流が大きいなどの問題が残され、実用化には課題が残っていた。
これに対して研究グループは、固体電解の中の「イオンの移動」を利用して磁気特性を制御する新しいスピントロニクスを開発した。「酸化鉄(Fe3O4)」「ケイ酸リチウム」「コバルト酸リチウム」と「白金電極」を積み重ねた構造を作った。
ここに正の電圧を加えると、個体電解質(ケイ酸リチウム)のリチウムイオンを磁性体(Fe3O4)の中に挿入や離脱することが可能で、電圧0V(ボルト)から2Vの範囲で変化させて磁気抵抗効果や磁化率を制御できた。また磁化抵抗効果も外部電圧によって制御できることを確かめた。
固体内のイオンの移動を利用して磁気特性を制御するという新しい手法は、素子構造が簡素化できることや小さな電流で磁気制御が可能になり、高性能素子の開発につながるものと期待されている。

今回開発した手法の模式図。外部電圧をかけて、個体電界質(ケイ酸リチウム)内のリチウムイオンを磁性体(Fe3O4)内に挿入・離脱させることによって磁気抵抗効果や磁化率を制御する(提供:(国)物質・材料研究機構)