(国)国立環境研究所は1月11日、2090年代の世界平均気温変化予測の不確実性を、2050年までに大幅に低減できることを解明したと発表した。地上気温の観測データを2050年まで蓄積すると、60%以上の不確実性低減が可能という。
■複数の気候モデルの実験結果を分析
現在の気候モデルによる将来気候変動予測には大きな不確実性があり、気候変動対策を考えるためには予測の不確実性の幅を小さくすることが求められている。
2015年末にパリで開かれたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)で、世界平均気温変化を2℃または1.5℃以下に抑えることが合意されたが、気温変化予測に用いられた15の気候モデルによる予測には大きな幅があり、温室効果ガスの削減量や削減コストの見積もりに大きな差が出るという問題を抱えている。
国環研では東京理科大学、東京大学、英国オックスフォード大学の研究者らと共同で、複数の気候モデルの実験結果を分析し、世界平均気温の予測不確実性をいつまでにどれだけ低減できるかを予測した。
観測データの今後の追加がもたらす不確実性の低減効果を推定する手法を開発し、それを用いて調べたところ、地上気温の観測データを2050年まで蓄積することによって、2090年代の気温変化予測の不確実性は60%以上低減できるという結果が得られたという。
今回の成果によると、2050年までは予測の上限をもとに排出削減を進めるが、不確実性が減る2050年ころに削減策を変更するなどの対応が考えられるとしている。