(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月27日、次世代の超音速旅客機実現を目指して研究開発中の試験機がスウェーデンで行った実験の計測を解析した結果、低ソニックブームを低減、設計技術を実証したと発表した。JAXAでは、試験結果を国際民間航空機関(ICAO)に報告、国際基準策定に向けた技術的な議論、検討を加速させたいとしている。
■コンコルドに適用したらソニックブームは半減
ソニックブームは、超音速で飛行する航空機から発生する衝撃波が結合して機体の先端と後端の両方から生じる落雷に似た大きな衝撃音で、次世代超音速旅客機では、その低減化が不可欠とされている。先端で生じるソニックブームの低減化は既に米国で飛行実証されている。今回は、音速の1.39倍での先端と後端の両ソニックブームを同時に低減したことが、計測の解析で明らかになった。先端と後端の同時低減を実証した例は世界でも初めてという。
また、計測したデータには、想定していなかった気流の乱れの影響が含まれていたことも分かった。JAXAでは、新たに解析ツールを開発、詳細なデータ解析を行っている。
使用した超音速試験機は、エンジンを搭載していない無動力のアルミニウム合金製の無人超音速滑空機。全長7.9m、主翼幅は3.5m、重量は1t。試験機は、JAXAが開発した特許取得済みの小型超音速旅客機(50人乗り)用先端・後端両ソニックブーム低減化設計技術を採用。この試験機をスウェーデン・エスレンジ実験場で7月24日(現地時間)、大型気球により高度約3万mまで上げて滑空させ、地上と高空にセットした4カ所のソニックブーム計測専用のマイクシステムで計測に成功した。
JAXAは、「仮に今回の結果を(超音速旅客機の)コンコルドに適用した場合、ソニックブームはおよそ2分の1に低減可能となり、さらに50人規模の小型超音速旅客機に適用した場合にはコンコルドの4分の1に低減可能」としている。
超音速旅客機のソニックブームの低減目標は、「コンコルドの4分の1程度というのが世界的な共通認識」(JAXA)とされているので、今回の結果はその目標レベルに達していることになる。
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スウェーデンで行われた超音速飛行の実験の様子(提供:JAXA)