(国)物質・材料研究機構は10月27日、九州大学との共同研究で、光電変換効率の高い高性能太陽電池用の高品質シリコン単結晶を低価格で作製する技術を開発したと発表した。国産太陽電池に価格競争力を持たせることが期待でき、国内太陽電池産業の復興に役立ちそうだという。
■製法の最適化で変換効率さらにアップ目指す
開発したのは、高品質で高価格な単結晶を作る製法と、品質は若干劣るが低価格な多結晶を作る製法のそれぞれの長所を兼ね備えた、高品質で低価格な単結晶を作り出す技術。
現在、高品質高価格の太陽電池としては、半導体シリコン単結晶(CZシリコン)を使って、変換効率20%超の製品が製造されている。一方、汎用の低価格太陽電池にはmc-Siと呼ばれる多結晶シリコンが使われ、変換効率は16~18%のものが主流となっている。
新製法はシングルシードキャスト法と呼ばれ、一つの種結晶をもとに、鋳造によって高品質低価格なシリコン単結晶を得る製法。高品質高価格のCZシリコンの製法であるチョクラルスキー(CZ)法は、るつぼ内の溶融シリコンに上から種結晶を接触させ、種結晶をゆっくりと回転させながら引き上げて単結晶インゴット(塊)を作り出している。一方の多結晶シリコン製法では、溶融シリコンの入ったるつぼの底にたくさんの種結晶を敷き詰めて結晶を成長させる鋳造法(マルチシードキャスト法)で、多結晶インゴットを得ている。
新製法はるつぼの底に置いた1つの種結晶からインゴットを鋳造するもので、結晶育成のコストや原料コストを削減できるという特徴がある。
また、るつぼに取り付けてある電気炉の構造を設計し直して熱分布と温度の管理を改善したり、鋳造法の欠点であった軽元素不純物の混入を極限まで抑えたりし、CZシリコンに迫る品質を実現した。
できた結晶からシリコンウエハを切り出し、太陽電池を製造して変換効率を調べたところ、高品質高価格のCZシリコン並みの効率が確認された。今後、製法の最適化によってさらに変換効率の向上が期待でき、この技術を国内メーカーに移転することによって国際競争力を高められそうだとしている。

開発したシングルシードキャスト法の特徴(提供:(国)物質・材料研究機構)