筑波大学システム情報系の山際伸一准教授は10月28日、映像などから取得した身体の動きを多数保存した「動きのビッグデータ」を解析し、初心者の技能を上位者の理想状態に近づけることのできる新しい手法を開発したと発表した。大阪大学、ミズノ(株)との共同研究で、ランニングや野球のバッティング、スキーのパラレルターン(滑降技術の一つ)などにも幅広く適用できる。さらにけがのリハビリや健康管理、伝統芸能の技の伝承にも応用が可能としている。
■運動技能から、リハビリ治療判定、伝統技能の保存も
研究チームは、ミズノが所有する約2000人のランナーの映像から、3次元の動きのデータを人工知能で解析し、技能の差を表すことに成功した。ひじ、ひざ、足首に関して記録がよい人と悪い人をグループ化し、初心者グループと上位者グループ間のデータの差を「距離」という数値で表した。ひじやひざ、足首などの「距離」を基にスコアを与え、より好タイムにできる影響度が表示でき、重点的なトレーニング法で弱点の克服も可能になる。
グループ化を野球のバッティングに適用すると、バッター間の技能差だけでなく、用具の木製バットと金属バットの差も「距離」に現れることが分かり、数値化できた。
動きのデータを取ることで、スキルの変遷や習熟者との「距離」、道具のフィット感などを客観的に評価でき、その人固有の改善点を修正しながら熟練の技への道筋を示してくれるという。
こうしたスポーツの練習以外にも、けがをした患者のリハビリ治療の判定や、伝統技術保持者の動きをデジタル化によって継承するなど幅広い応用が考えられるとしている。