筑波大学は10月30日、ドイツのハイデルベルグ大学、岡山大学、東京薬科大学、(国)理化学研究所の研究者らと共同で、細胞分裂にかかわりのあるタンパク質「γ(ガンマ)-チューブリン」の特異的阻害剤を世界に先駆けて同定したと発表した。がん細胞の分裂を阻害する抗がん剤などの開発が期待されるという。
■細胞分裂後期に重要な役割
チューブリンは、細胞中に存在する直径約25nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)のチューブ状の微小管を形成している一群のタンパク質で、α、β、γなどが知られている。α-チューブリンとβ-チューブリンが結合した二量体が繊維状につながり、螺旋を巻いて微小管を形成、γ-チューブリンは、微小管が中心体という細胞内の組織と結合する付け根の部分を構成している。
微小管は細胞分裂の際に形成される星状体や紡錘体などの主要な構成物であることから、それを阻害する物質は抗がん剤の候補であり、α/β-チューブリンの阻害剤のいくつかはすでにがん治療薬として使用されている。
研究グループはγ-チューブリンに着目し、α/β-チューブリン阻害剤をもとにγ-チューブリンの特異的阻害化合物「Gatastatin(ガタスタチン)」を同定することに成功した。さらに、この阻害化合物を用いてγ-チューブリンの機能を詳しく調べ、γ-チューブリンが、細胞分裂後期に重要な役割を果たしていることを見出した。
今後、より活性の強いγ-チューブリン阻害剤の開発や機能の解析を通じて、新たな抗がん剤の開発が期待されるとしている。