(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月27日、「静かな超音速旅客機」実現に向けてスェーデンの実験場で進めている低ソニックブーム設計の模型無人試験機の飛行実験を24日に行い、試験機は正常に滑空して超音速飛行をし、発生したソニックブームを地上設置の装置で計測するのに成功したと発表した。模型試験機の超音速飛行とソニックブーム計測の成功は世界初という。
■機体先端と後端に低ソニックブーム設計
この飛行試験はスウェーデン北部のフィンランド国境に近いキルナのスウェーデン宇宙公社エスレンジ実験場で行われた。日本時間で7月24日午前11時43分に試験機を吊った気球を放球し、同日午後5時に高度30.5kmで試験機を切り離した。分離された試験機は約50度の経路角で降下、音速の1.39倍(マッハ1.39)で地上設置の計測システム上を通過する際のソニックブームをキャッチするのに成功した。
ソニックブーム低減は次世代超音速旅客機を開発する上での大きな課題となっており、JAXAもこの問題に対処するために「低ソニックブーム設計概念実証プロジェクト」を進めている。現在、フェーズ2の段階で、今回の飛行試験はその一環である。
今回飛ばした無人試験機は全長約9m、翼幅約3.5m、重さ約1tで、JAXAの低ソニックブーム設計技術で機体の先端と後端に対策が施されている。
今回のようなフェーズ2の飛行試験の第1回目は2年前の2013年8月に行われたが、この時は試験機が計画した経路を外れて、想定していた条件での計測ができず失敗。2014年8月の第2回目も天候不順で飛行ができず、今年の3回目でやっと飛行試験が実現した。
今回の試験では、試験機がソニックブーム計測システム上を正常に超音速飛行し、試験機が発したソニックブームが複数のマイクロホンで計測されているのを確認した。JAXAは今後、詳細な解析を行う、としている。

実験場での放球の様子。試験機は右端のクレーに吊り下げられている(提供:JAXA)