(国)産業技術総合研究所は10月27日、中国の四川大学、ドイツのマックスプランク物質構造・ダイナミクス研究所と共同で、グラフェンの層を短冊状に切ったグラフェンナノリボンが、紫外光をテラヘルツの周期で変調させる作用があることをシミュレーションで発見したと発表した。テラヘルツ波発振素子への応用が期待できるという。
■建築物の劣化の測定、生態観察などに利用へ
グラフェンは、炭素原子が蜂の巣のような六角形格子構造をとっている1原子厚のシート状物質。このグラフェンを短冊状にしたグラフェンナノリボンは、半導体にみられるバンドギャップを持ち、半導体のような特性を示す。
研究グループは今回、物理学の基礎理論に基づいて計算する第一原理計算を用い、紫外光がグラフェンナノリボンを通過する際に起こる現象をシミュレーションした。その結果、紫外光の強度がグラフェンナノリボンによりテラヘルツ(1兆ヘルツ)の周期で変調されることを見出した。
グラフェンナノリボンを半導体表面に塗布して紫外光を照射すると、変調された紫外光が半導体に到達し、半導体内に流れる光電流がテラヘルツ周期で変調される。この半導体をアンテナに接続すればテラヘルツ波を発生できると予想されるという。
これを応用すれば、特定有害物質の同定や建築物の劣化の測定、生態観察などに利用できるコンパクトなテラヘルツ波発振素子の開発が期待できるという。