(国)海洋研究開発機構と(国)国立環境研究所の共同研究グループは7月17日、地上と衛星の全球的な観測データを用いることで、北半球の中高緯度地域において二酸化炭素(CO2)の吸収排出量を高い精度で推定可能になったと発表した。熱帯域における推定値には大きな差があり、今後の気候変動の予測精度向上には熱帯域の地上観測ネットワーの充実が重要としている。
■熱帯域は違いが大きく、地上観測ネット拡充必要
CO2吸収排出量の推定には現在、トップダウンとボトムアップと呼ばれる2つの方法が用いられている。トップダウンは大気CO2濃度から、大気輸送モデルをもとに吸収排出量を逆推定する手法。ボトムアップは、光合成、植物呼吸、土壌有機物の分解などのCO2吸収・排出プロセスに基づいて推定値を積み上げる手法。ただ、これらの手法によるCO2吸収排出量の推定値は必ずしも一致しないため、より正確な推定法が求められていた。
研究グループは、2つの推定手法に全球の観測データを組み込めば予測精度が向上し、手法間の推定誤差を縮小できるのではないかと考え、トップダウンアプローチには、地上観測データに加え、日本が打ち上げた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」の測定濃度を利用、ボトムアップアプローチでは、地上観測の広域データから観測空白域をコンピュータの学習機能を利用して補完する工夫をした。
これら2つの手法が推定する近年のCO2吸収排出量の整合性を調べたところ、北半球の中高緯度域においては非常に高い整合性が認められ、信頼のできる推定が可能になったことをつかんだ。
ただ、熱帯域においては推定値に大きな違いが出た。これは熱帯域での地上観測が不足しているためと考えられという。研究グループは熱帯域の観測の充実がさらなる予測精度向上の課題と指摘している。