(国)産業技術総合研究所は7月15日、(国)海洋研究開発機構と東京大学地震研究所との共同研究チームで、海底火山の噴火が続いている小笠原諸島西之島の周辺海域を学術調査したと発表した。調査は海洋研究開発機構の海洋調査船「なつしま」を使って6月中旬に行った。西之島の噴火は、大陸地殻の「安山岩」のマグマが海洋で噴出している地球科学的に興味深い噴火で、今回得た調査試料はその原因を究明する手掛かりになりそうだという。
■「安山岩」を噴出…海洋からの大陸誕生の仮説検証へ
西之島では平成25年11月から活発な火山活動が続いており、海底火山の噴火で拡大した西之島は直径約2.1km、海抜140m以上に達し、なお成長を続けている。調査は西之島から4.5km以上離れた海域で実施、海底地形の調査、溶岩試料や火山灰の採取、噴火活動の観測などを行った。
地球の地殻は一般的に、大陸が安山岩と花崗岩から成り、海洋地殻は玄武岩で構成されている。ところが、約40年前に西之島で噴出した溶岩はすべて安山岩であったことがその後の調査で分かり、この不思議な現象は、海洋からの「大陸の誕生」の現出ではないかとの仮説が提唱されている。
つまり、太古水惑星であった地球で大地ができてきたのと同じような現象が西之島で起きているのではないか、それを知る手掛かりが西之島の噴火に隠されているのではないか、と考えられている。
今回の噴火による溶岩流は島から4.5km外側には届いていなかったが、採取した試料には、かんらん石を含む溶岩や、マリアナ島弧における海底火山で採取された初生マグマに似た特徴を持つ溶岩が含まれており、これらは大陸誕生のカギを握る試料の可能性があるという。
研究チームは今後採取試料を詳細に分析し、大陸成因の仮説を検証したいとしている。