(国)農業環境技術研究所と(国)農業生物資源研究所は7月17日、共同でカドミウムをよく吸収するイネの新品種を開発し、品種登録出願したと発表した。この新品種は、「ファイレメCD1号」と呼ばれ、カドミウム吸収力が大きく、汚染された水田の浄化に適しているという。
■長粒・赤米で食用イネと明確に識別
食品衛生法では、米に含まれるカドミウムの量を玄米、精米ともに1kg当たり0.4mg以下と定めており、この基準値を超える米が生産されないようにする対策として、これまで土の入れ替え(客土)が行なわれてきた。
しかし、客土は、コストが高く、大量の土が必要なことから、それに代わる新しい対策技術の開発が求められている。その有力候補として期待されているのが「ファイト(植物)レメディエーション(修復)」と呼ばれる、カドミウムをよく吸収するイネ(カドミウム高吸収イネ)をカドミウム汚染水田で栽培し、カドミウムをイネに吸収させて刈り取り、高温焼却炉でモミもワラもすべて焼却するという方法。
今回のイネ「ファイレメCD1号」は、その「ファイトレメディエーション」専用品種として開発したもので、両研究所は平成28年度までの予定で実用性の検討に入っている。
農環研は、今回の新品種開発に先立ち平成21年に別品種のカドミウム高吸収イネを使う「ファイトレメディエーション」を発表しているが、①イネが倒れやすい②刈り取り前にモミが脱落しやすく、水田に落ちたモミが次の年に発芽して育ち、他のイネに混入しかねない、という壁にぶつかっていた。
新品種「ファイレメCD1号」は、カドミウムをよく吸収する外国原産の「ジャルジャン」というインディカ品種に生物研の放射線育種場(茨城・常陸大宮市)でガンマ線照射を行って得た突然変異体。カドミウム吸収能力は日本の食用品種の約10倍になるという。
倒伏しやすく、脱粒しやすいという欠点も改善され、日本の機械化した栽培に合っているという。また、「ファレメイCD1号」は、背が高く、実る米が長粒の赤米であるため普通の米とは明確に識別することができるとしている。

ファイレメCD1号のもみと玄米の識別性(提供:(国)農業環境技術研究所)