体内時計のペースメーカー細胞を突き止め
―「ニューロメジンS」を作る細胞群が指令塔
:筑波大/米テキサス大(2015年3月5日発表)

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体内時計の中枢、視交叉上核。体内の時計を統合するマスターロックは、脳の支障株の視交叉上核にある。目の網膜には明るさを感知する神経細胞があり、この細胞からのシグナルが視交叉上核に送られることによって体内時計が毎日リセットされる(提供:筑波大学)

 筑波大学は3月5日、米国テキサス大学との共同研究で、睡眠や覚醒のリズムを調節する体内時計に、ペースメーカーとして働く神経細胞群があることをマウスで特定したと発表した。さらに解明が進めば、睡眠障害などの診断や治療に役立つと期待される。

 

■睡眠障害の診断、治療に期待

 

 人間や多くのほ乳動物には、朝になると目を覚まし、夜には自然な眠りに導かれるように24時間周期で繰り返される概日(がいじつ)リズムが存在する。身体に備わっている体内時計の効果によるもので、このリズムが脳や体の疲労を解消している。

 体内時計はさまざまな臓器や細胞などにあって、体全体に分散されている。これらをまとめて調整する指令塔の役割を、脳の視床下部の視交叉上核が果たしていることは分かっていた。マウスには2万以上の神経細胞が集まっているが、どの物質が体内時計の調整をしているかが不明だった。

 柳沢正史・筑波大教授らのチームは、視交叉上核の神経細胞のうち神経ペプチドの「ニューロメジンS」(NMS)を作っている特定の細胞に着目した。まずこの遺伝子を操作すると、行動リズムが変化するシステムをマウスで作成した。時計のリズムを遅くすると視交叉上核の行動のリズムも遅くなり、止めるとリズムがとまることを確かめた。そこで、NMSを作る細胞群が生物時計の指令塔であると結論付けた。

 研究チームは、神経細胞群の作る神経伝達物質が、すでに知られている複数の物質の組み合わせか、それとも未知の物質なのかを調べることで、体内時計の全体像が解明できるものとみている。

 体内時計はホルモンの分泌や血圧、体温調整などの生理活動もコントロールしている。海外旅行で時差ぼけが起き、深夜労働で睡眠時間が狂うと、学業や仕事に支障をきたすなど社会的影響も大きい。さらに、がんや生活習慣病、精神疾患などとも関わるといわれるだけに、根本的な解明が急がれている。

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