中央アジア東部乾燥地帯、温暖化で降水量増加も
―土壌堆積物などから8500年間の夏の降水量を推定
:国立環境研究所/中国・中国科学院ほか(2014年11月27日発表)

 (独)国立環境研究所は11月27日、今後も地球温暖化が続くと中央アジア東部乾燥地帯の湿潤化が進み、降水量が増加する可能性が高いと発表した。、中国の中国科学院地球科学研究所、フランスのCEREGE研究所との共同研究で、中国西北部の土壌堆積物から過去8500年間にわたる夏季降水量を推定した結果分かった。湿潤化には北大西洋や東アジアなどの気候変動も影響しており、同地域の環境への影響予測だけでなく地球規模の気候モデルの開発などにも役立つと期待している。

 

■産業革命以降、二酸化炭素増え夏季降水量が増加

 

 土壌を採取したのは、中央アジア東部に位置する中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市の南東45kmにあるチャイオプ湿原。地中2.6mの深さまで泥炭層をくりぬいて、含まれていた植物セルロース中の炭素でその年代を測定。さらに年間降水量の65%を占めるとされる夏季降水量を年代ごとに分析した。

 その結果、中央アジア東部乾燥地帯では8500年前から現在に至るまで、何回か急激な湿潤化が起き、一貫してそれが進行する傾向にあったことが判明した。特に大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が大きく上昇した産業革命以降は、過去8500年間に見られなかったほど急激に夏季降水量が増加していた。

 このことから、今後も温暖化が続いた場合、この地域では降水量が増加し湿潤化傾向がいっそう促進される可能性があると同研究所はみている。現在、同地域は植物がまばらなだけに、降水量が増加すれば洪水災害の発生なども懸念されるとして、水害対策を含むインフラ整備などが必要になると指摘している。

 今回の研究では、中央アジアの湿潤化が特に東アジアの季節風「東アジアモンスーン」の影響を強く受けていることが分かった。また、湿潤化の時期には北大西洋は寒冷化しており、北大西洋の気候変動が大気循環を介して中央アジアの気候システムにも影響を与えていたことが明らかになった。

 中央アジアは、シルクロードを中心とした東西文明の要として重要な役割を果たし、歴史的に重要な遺跡が多い。湿潤化などの気候変動はこうした過去の文明の盛衰にも大きな影響を与えたと考えられているが、偏西風やインド、東アジアの季節風の影響を複雑に受けるこの地域の気候変動の実態はこれまで十分に解明されていなかった。

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