凹凸6.3nm以下、超高精度平面ガラス基板開発
―「関東平野の広さに対し5mm程度の凹凸」を実現
:産業技術総合研究所/テクニカル(2014年7月24日発表)

 (独)産業技術総合研究所は7月24日、光学部品メーカーの(株)テクニカルと共同で表面の凹凸が約6.3nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以下の超高精度平面ガラス基板を開発したと発表した。製造現場で広く使われる平面度測定装置の基準板として用いれば平面度の測定精度を従来の5倍にでき、光学部品の加工精度向上に役立つと期待される。

 

■従来の限界を超える精度で測定

 

 開発した平面ガラス基板の凹凸は、関東平野で高地と低地の標高差がわずか5mm程度しかないという平坦さに相当する。産総研が新たに開発した超高精度平面度測定装置(SDP)を利用して実現した。

 SDPはビーム状の光を測定対象に照射、戻ってくる反射光の角度のわずかなズレから測定対象表面の凹凸を調べる装置。今回、オートコリメーターと呼ばれる市販の角度測定装置に特殊な鏡を利用して非常に高い測定精度を持つ装置を実現することに成功した。産総研が開発したこの新技術による評価結果をもとに、テクニカルはガラス基板の研磨に取り組み、直径100mmの超高精度平面基板を開発した。

 そこで工場などの製造現場で平面度測定用に国家標準機として広く使われているフィゾー干渉計に、この超高精度平面ガラス基板を基準平面板として組み込んだ。その結果、既存のフィゾー干渉計でも、基準平面版と同じ6.3nm以下という高い精度で平面度を測定できることがわかった。

 フィゾー干渉計では従来、基準平面版に発生する重力によるたわみの影響を評価できず高精度化は困難とされており、約32nmが測定精度の限界とされていた。今回開発したSDPでは重力による基準平面板のたわみも高精度で評価できたため、フィゾー干渉計の高精度化が実現できた。

 今後、テクニカルは、開発した超高精度平面ガラス基板を基準板として組み込んだフィゾー干渉計を用いて自社生産の光学部品の高精度化を進めるとともに、直径150mmの大型の超高精度平面基板の開発に取り組む。また産総研は今秋をめどに、今回開発したSDPを用いた平面度の校正サービスを開始する。

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図

左は、今回開発した超高精度平面基板(直径100mm)、右は、その平面形状測定結果。赤色の部分(外周付近)と最も凹んだ青色の部分(中央付近)との凹凸の差が6nm以下となっている(提供:産業技術総合研究所)