筑波大学と(独)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)などの研究グループは6月3日、植物の花の色を制御する遺伝子を初めて突き止めたと発表した。黄色い花の色がうすくなったトマトの変異体集団の遺伝子を解析して明らかにした。新しい色を持つ観賞用花きの開発などに役立つと期待している。
■新しい花色の開発に期待
筑波大・生命環境系の有泉亨助教、江面浩教授と農研機構花き研究所のほか、(一財)生産開発化学研究所、(公財)かずさDNA研究所、東京大学、フランスの国立農学研究所が研究グループに参加した。
生物の器官・組織に黄色や赤、オレンジなどの色を付ける色素としてカロテノイドが知られているが、そのうち酸素分子を持つ化合物はキサントフィルと総称される。植物の花や果実では、このキサントフィルが脂肪酸と結合したエステル化キサントフィルの形で含まれている。
研究グループは、トマトの品種「マイクロトム」で変異が起きた1万系統以上の集団を栽培し、カロテノイドを含まず花の色が薄くなった系統を複数選抜した。これらの系統を詳しく分析したところ、エステル化キサントフィルをほとんど含まない系統があることがわかった。
そこで、それらの系統のゲノム(全遺伝情報)を解析、エステル化キサントフィルが失われる原因となっている遺伝子を突き止めた。さらに詳しく調べた結果、この遺伝子がキサントフィルと脂肪酸からエステル化キサントフィルを作り出す際に働く酵素遺伝子であると推測された。
研究グループは、「キサントフィルへの脂肪酸のエステル結合は、組織内のカロテノイド蓄積を安定化させる役割がある」と推測。この遺伝子を活用すればカロテノイドの蓄積量を多くして新しい色の花も作れるとして、花き研究所は新品種開発を進めている。