(独)産業技術総合研究所は6月3日、(株)ライフ技術研究所、つくばテクノロジー(株)と共同で、検査ロボットなどに搭載できる小型軽量の非破壊検査用パルスX線源を開発したと発表した。このX線源を利用すると配管設置場所のような狭い空間での検査や移動しながらのX線撮影が可能で、小回りの利く効率的な非破壊検査が行えるという。
■従来の10倍の長寿命を実現
開発したX線源は、瞬間的にキロワットオーダーの強いX線を発生する高出力パルスX線管などから成るX線発生装置。針葉樹のような形をした微細なカーボンナノ構造体を電子源とし、これに負の高電圧をかけて電子を引き出し、それをタングステンなどの重金属ターゲットに当ててX線を発生させる。
研究チームは今回、針葉樹型カーボンナノ構造体の電子源としての出力安定性を高め、従来のX線管に比べて10倍の長寿命化を実現するとともに、小型駆動回路を開発、厚さ70mm以下、重さ2.5kg以下の小型軽量化を達成した。
従来のX線源は大きく重く電源供給用配線を必要とし、現場作業性が悪かったが、新X線源は乾電池などでも駆動できるので作業が電気配線などで制約されることがなく、またロボットに搭載して移動しながら作業性の悪い現場での検査ができる。ミリ秒オーダ-のパルス X線を出せるので瞬間の状態の像も得られる。
研究グループは今後、X線源を高性能化するとともに自動検査システムの開発などを進めるとしている。

左は、パルスX線源(120kV)とサイズ比較のためのCDケース。中と右は、金属製バルブのX線透過写真、中はバルブ閉、右はバルブ開(提供:産業技術総合研究所)