地震・津波に強い「三面一体化堤防」を開発
―粘り強さが大幅に向上、施工性、コスト削減も期待
:農村工学研究所/竹中土木(2014年6月5日発表)

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新型堤防の概略図(提供:農村工学研究所)

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構の農村工学研究所は6月5日、(株)竹中土木と共同で地震・津波に強い三面一体化堤防を開発したと発表した。地震の揺れや津波の浸食にさらされる堤防の2つの法面(のりめん)と上端部を鉄筋などで一体化、地震・津波に対する粘り強さを大幅に向上させた。農林水産省が進める海岸復旧事業に新技術として提案し、普及につなげたいとしている。

 

■実験でも強靭性確認

 

 開発した堤防は、盛土の表面を土とセメントを混ぜた高強度の「セメント改良土」で被覆、さらに工場であらかじめ製造したプレキャストコンクリートブロックで固める。盛土の内部と表面は高分子材料で作ったネット「ジオテキスタイル」で補強、表面のセメント改良土とブロックを盛土と一体化した。ブロック同士はジョイントで結合、さらに、法面の最下端の法先地盤をセメント改良土で改良し、越流した津波により堤防下部の土砂が流出する「洗掘」に対して強化するなど、堤防全体の一体性を高めた。

 堤防は、津波が海岸堤防に衝突して越えていくときに表面のブロックの剥離と洗掘によって不安定化、堤体の浸食が始まる。それが堤防の本格的な決壊を招く大きな要因とされるが、三面一体化堤防ではこの浸食破壊に対する抵抗力が大幅に向上。東日本大震災級の津波を想定した実験などによって堤防の粘り強さと強靭性が確認できた。堤防の被覆に使うブロックが工場生産のため、現場での施工性とコスト削減にもつながる。

 農研機構は今後、東日本大震災の復興事業に加え、東南海トラフ地震で被害が予想される地域での活用を期待している。

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