気体分子のキラリティの簡便な検出法を開発
―液晶を用いて応答は数秒、偏光顕微鏡で容易に観察
:産業技術総合研究所

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マイクロリンクルの溝中の液晶の周期的配向構造の変化による光学活性気体分子のセンシング(提供:産業技術総合研究所)

 (独)産業技術総合研究所は5月1日、気体分子のキラリティを簡便に素早く検出できる技術を開発したと発表した。気体分子のキラリティに応じて、特殊な形状をした微細溝の中の液晶の構造が短時間に変化するという現象を利用したもので、香料など揮発性化学品の分析や環境中の気体分子のモニタリングなどへの利用が期待できるという。

 

■揮発性化学品分析などに有効

 

 キラリティは、右手と左手のように鏡に映した対称的な構造を持っており、鏡像同士が重ね合わせることができない性質で、生体分子など有機化合物に多くみられる。
 気体分子のキラリティ検出では、これまで特殊なガスセンサーやクロマトグラフィーを用いる方法などが開発されているが、検出操作に手間がかかったり装置が高価だったりした。
 新技術は、マイクロリンクルと呼ばれる微細な表面凹凸構造(しわ状の溝)を液晶基盤として利用する。このマイクロリンクルに液晶を閉じ込めると、配向ねじれの向きが右巻きと左巻きの領域がほぼ同じ長さで交互に繰り返され、いわゆる周期的な液晶配向構造になる。
 ここに気体分子を吹き付けると、液晶に溶け込んだ気体分子のキラリティに応じて、マイクロリンクル中の液晶の配向構造が変化し、片方の領域長が相対的に長くなる。この変化からキラリティが簡便に検出できる仕組みだ。
 液晶の応答はわずか数秒と速く、偏光顕微鏡で容易に観察できる。このため、微量の気体試料中のキラリティを常温常圧下で迅速に評価できるセンサーシステムを容易に安価に作製できる。
 研究チームは今後、液晶の種類や実験条件を最適化し、検知可能な分子を増やして汎用性を高めたいとしている。

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