アジアの植物遺伝子源利用で各国と共同研究
―高温や病害中に強い新品種開発へ各国と基盤づくり
:農業生物資源研究所ほか

 (独)農業生物資源研究所は4月30日、イネや野菜などの新品種開発に欠かせない植物遺伝資源の特性などを解明する二国間共同研究を2014年度から5年計画でアジア各国と始めると発表した。地球温暖化に対応し、高温や病害虫に強い品種の開発のために、育種素材として植物遺伝資源の確保が重要となっている。遺伝資源の宝庫といわれるアジアで各国の権利意識の高まりから新たな遺伝資源の導入は難しくなっているが、共同研究による技術移転や育種事業の支援を通じて相互に利用できる環境を整えていく。

 

■技術移転で育種事業支援も

 

 共同研究は、農林水産省の「海外植物遺伝資源の収集・強化」のための研究プロジェクトで進める。昨年、国会で「植物遺伝資源に関する国際条約(ITPGR)」が採択されたのを機に、アジア地域の植物遺伝資源を各国が相互利用できる環境を整える「アジア植物遺伝資源構想」の実現を目指す狙いだ。わが国からは、同研究所をはじめ、(独)国際農林水産業研究センター、筑波大学、岡山大学、新潟県農業総合研究所など13機関が参加する。
 初年度はベトナム、ラオス、カンボジアの3カ国と共同研究を始める。双方に重要性の高い、キュウリ、メロン、カボチャ、ナス、トウガラシ属などの野菜と、イネやソルガム(コーリャン)などの穀類について、特定の病害抵抗性などに関する遺伝特性を解明していく。また、遺伝子DNA(デオキシリボ核酸)を用いた育種に利用できる標本コレクションを作成して国内の種苗会社などにも配布、育種に利用できるようにする。
 さらに、共同研究の相手国の研究者を日本に招き、植物の遺伝特性の評価手法などを技術移転することで育種事業を支援する。こうした活動を通じて、植物遺伝資源の相互利用ができるよう協力関係を強化する。次年度以降は、インドネシア、ミャンマー、スリランカにも参加を呼びかけ、共同研究の相手国を5カ国以上に増やす計画だ。
 多様性のある植物遺伝資源は、地球温暖化などに対応できる新品種開発を進めていくうえで重要性がますます高まっている。しかし、アジアでは多様性保護に必要なジーンバンクが未整備で自国でも十分活用できる体制になっていないほか、栽培品種の画一化などによって貴重な在来種の遺伝資源が失われてしまう危険性も高まっていた。

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