
ポーリネラの殻構築過程。1本の太い仮足が、鱗片を1枚ずつ積み上げながら殻を構築していく(提供:筑波大学)
筑波大学の石田健一郎教授(生命環境系)の研究グループは3月5日、うろこ状のガラス材料のケイ酸質でできた殻を身にまとう単細胞生物のアメーバが、細胞分裂の際に新しい殻を作り上げる様子をビデオ撮影することに成功したと発表した。アメーバは移動の際に使う仮足を動かして50枚余りのうろこを1個ずつ積み上げていた。単細胞生物がこのように複雑な作業をこなす仕組みを分子レベルで解明する重要な手がかりになるという。
■1本の仮足使い殻を積み上げ
撮影に成功したのは、有殻アメーバの一種「ポーリネラ・クロマトフォラ」。ため池など流れのほとんどない穏やかな淡水に生息する単細胞生物で、ガラス材料のケイ酸質でできた、うろこ状の殻を身にまとっている。ただ、このアメーバは培養が難しく、殻がどのようにして作られるのかはよく分からなかった。
そこで石田教授らは、まずこのアメーバを安定的に培養する技術を確立。アメーバが細胞分裂に先立って自分の殻の外側にもう1つ別の殻を作り上げていく様子を、顕微鏡下でコマ撮り動画として撮影することに成功した。
アメーバはまず、細胞内で50枚余りのうろこを形成して細胞の外に分泌する。うろこ片は大きさや形が少しずつ異なるが、それらを1本の仮足を使って順序正しく積み上げるように殻を作り上げていた。殻ができ上がるとアメーバは細胞分裂し、新しく生まれた細胞が殻の中に移動していった。
今回の成果について、石田教授らは「複雑と思われる作業をたった1本の仮足が行っていることを初めて明らかにした。単細胞生物の驚くべき能力の一つを示すものと考えられる」と話している。