
今回開発した高周波電力計校正用国家計量標準器(提供:産業技術総合研究所)
(独)産業技術総合研究所は3月3日、(独)情報通信研究機構と共同で車載レーダーなどの電波障害防止試験に欠かせない高周波電力計を校正するための国家計量標準器を開発したと発表した。110~170GHz(ギガヘルツ、ギガは10億)帯の超高周波領域では電力計の測定値にこれまで30%以上のばらつきがあったが、この誤差を4%以内に高精度化した。情報通信研究機構は25日から無線通信機器向け校正サービスを開始する。
■車載レーダーなど電磁波利用広がる
開発した標準器は、測定対象となる超高周波領域の電磁波を吸収する吸収体と一定温度を保つ温度基準ブロック、直流ヒーターの3つが主要構成機器。直流ヒーターは電磁波吸収体の周りに取り付けられ、吸収体を常時温めている。
吸収体に電磁波を当てるとその温度が上がるが、温度基準ブロックとの温度差を常時感知して差がゼロになるよう直流ヒーターの電流を弱める。この電流減少分に相当する電力が電磁波の出力に相当するため、それを正確に測定することで超高周波領域の電磁波の出力(高周波電力)を測定できる仕組みだ。
周波数100GHzから数THz(テラヘルツ、テラは1兆)という超高周波の電磁波利用の研究が近年盛んで、その広がりは通信技術のほか衝突事故防止用の車載レーダーやセキュリティシステム、材料分析などにまで及んでいる。
こうした電磁波の出力を測定するのに現在も高周波電力計が使われているが、測定値にばらつきが多く問題となっていた。しかし、世界的に見ても正確な測定方法の開発が遅れており、より正確な測定値を保証できるよう高周波電力計の目盛合わせをするための標準器の開発が求められていた。
今後、より高い周波数領域の利用技術の開発が進むとみられるため、産総研は「数年後に300GHz(ギガヘルツ)を超える周波数帯までの国家計量標準を実現できるよう研究開発を進める」と話している。