(独)農業生物資源研究所と岡山大学の研究グループは3月3日、人工授精によるウシの生産に深くかかわっている黄体の成長について、新たな成長メカニズムを発見したと発表した。妊娠時のホルモン分泌を司る黄体は、黄体細胞の肥大のみではなく、細胞の増殖によっても成長することを見出した。成長期にある黄体機能の人為的制御に道を開く成果で、人工授精の効率向上が期待できるという。
■黄体、細胞の増殖によっても成長
ウシの人工授精ではホルモン製剤を投与して排卵時期を制御しているが、黄体の成長期には効果が見られないため、投与は黄体の成長期が過ぎるのを待つ必要があり、これが効率の低下につながっている。
ホルモン製剤が効かない黄体のこの成長は、これまで黄体の肥大によっていると考えられていた。ところが研究チームは今回、黄体の成長には細胞の肥大だけではなく細胞の増殖も関わっており、細胞の増殖によっても成長していることを見出した。
黄体細胞の増殖は活発な成長段階にある黄体でのみ確認され、その後の黄体の成熟期には増殖は認められなかったという。
また細胞周期調節遺伝子の発現を調べたところ、細胞周期の進行の促進に重要な役割を果たす「サイクリン」というタンパク質が成長期に高い発現を示し、細胞周期の進行を阻害するタンパク質群は、成熟期に高い発現を示すことがわかったという。
これらの発見は、黄体成長期においても排卵周期を制御可能にする技術の開発につながる成果で、ウシの生産効率の向上が期待できるとしている。