(独)産業技術総合研究所と技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構、は3月4日、塗布や印刷が可能な単層カーボンナノチューブ(CNT)コート剤を開発したと発表した。CNTの幅広い用途開拓が期待される厚みのあるCNT膜を低コストで作れる。企業への試料提供や技術移転を積極的に進め、様々な応用製品開発に結び付けたいとしている。(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構のプロジェクトとして開発を進めた。
■低コストで各種応用利用も
炭素原子が網目状に結合したナノ(ナノは10億分の1)レベル大の超微細な筒状物質CNTは、強度が大きく電気や熱をよく通すなど他の物質には無い種々の特性を持ち、高強度材、電極材、放熱材、エレクトロニクス部材などへの応用が期待されている。
それを実現する有力な成形加工法の1つが塗布や印刷方式の成膜技術だが、これまでは厚さがわずか数nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)程度の導電フィルムや薄膜トランジスタなどへの適用に限られていた。
今回研究チームは、スーパーグロース法というCNT製法で作った長尺のCNTを溶媒中に高濃度で分散させ、膜厚の制御性や膜面の平坦性、微細パターンの成形性に優れた単層CNTコート剤を開発した。
このコート剤を用いると、基板上にヘラで塗るブレードコーティング法で大面積の平坦な膜を得ることができ、塗液の厚みを変えることで膜厚を数百nmから数十μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)の範囲で制御できる。短尺のCNTを用いたコート剤では塗布液が乾いた後に膜面にひび割れが生じるが、そうしたことがない。
また、スクリーン印刷法で単層CNTの微細パターンを基板上に形成でき、最小幅50μmの細線印刷が可能。このコート剤にゴム材料など他の物質を混ぜれば様々な複合材料膜も量産できる。
今回の技術を用いると、低コストで単層CNTの各種応用利用が可能となることから、研究チームは今後企業との連携を深め、実用化開発を加速させたいとしている。

今回開発した技術について期待される波及効果(提供:産業技術総合研究所)